In Blue Skies

とある獣医の青年海外協力隊日記からのイギリス大学院留学

コンポストバーン

今日は、午前中に早々と診察の研修を終わらせ、昼からは、いつも行っている牧場で、コンポストバーンという何かの呪文のような、牛床を導入し、そのことで、乳房炎が激減した牧場と、子牛の下痢を積極的に改善した牧場を視察にこられた滋賀の酪農家の方達と一緒に、牧場見学をさせてもらいました。

 

日本の多くの牛舎は、つなぎ飼育や、フリーストール、フリーバーンなどで、まだまだ、コンポストバーンを導入している所は少ない(そうなんですが)

では、そのコンポストバーンというのがどういうものかというと、

休息エリアの敷料と糞尿を切り返して牛舎内で堆肥化する方式である。構造的特徴としては、休息エリアと採食通路を設け、休息エリアは三方を壁で囲み、採食通路の出入口を残して、隔壁を設ける。米国では休息エリアの床下は土だが、日本ではコンクリート舗装が必要だ。休息エリアはオガ粉などの敷料と糞尿が混ざった状態となり、これを1日に数回ロータリーなどを用いて切り返し、堆肥と同様に発酵させる。採食通路はフリーストールと同様に1日に数回除糞する。

というものです。

これによる利点として、

糞尿と敷料を牛舎内でただ堆積させただけの場合は、主に嫌気性発酵が起こり有機物分解は遅く、堆肥化せず悪臭の原因になる場合もある。また、飼養面積が不足すると、牛は糞尿や湿った部分で寝起きし牛体は汚れ、蹄病や乳房炎発生が多くなる。コンポストバーンでは、毎日の切り返しにより空気に接触することで好気性発酵しており、有機物の分解が速いため、悪臭の発生が少なく、表面が乾燥しているので牛体の汚れが少なく乳房炎発生も抑えられる。

ということです。

確かに、敷料はフカフカで衛生的。かつ、採食場と休む所が別々なので、素人目でも糞尿で汚れてる感じがすごく少ない!

image 写真写真のような感じです、フカフカな寝床、と採食場。

で、ここでは、このコンポストバーンによる撹拌で、好気性細菌の発育を促進しているのに加えて、

近所で有志が培養している納豆菌などの培養液を定期的に撒くことで、大腸菌等の発育を抑制しているということでした。

納豆菌とかでそんなに効果ホンマにあるんかいな。と自分も半分疑いの目で見てましたが、色々本を読むと、確かにそのような効果があるのと、やはり実際に、この方式を始められた1年半くらい前から乳房炎を含む様々な疾患が激減したとのこと。

「おかげでオレは暇になったよ。まぁ担当獣医が素晴らしいということにしているけどw」

とは担当の先生のお言葉です。

でも、今日ホントにすごいなぁと思ったのは、酪農家さん達の勉強量のすごさ。

ホントに色々なことにチャレンジし、しかもそれがちゃんと理論的な方法かつこうやって結果として現れてました。

この牧場も、一時はすごく病気が蔓延してたらしく、廃業も考えたそうです・・・

「正直、自分たちの夫婦の目だけでは限界があります。だから、獣医さんやメーカーさんにも定期的に見てもらって、客観的におかしなことがないか、常に教えてもらっています。」

という畜主さんの言葉がすごく印象深かったです。Dr.houseでもそうですけど、やはり否定する目って大事ですね。

それにしても、コンポストバーンは現実的でないにしろ、この納豆菌や乳酸菌の培養液、これ、結構実際に現地でできたら安価かつ、すごくいいんでは?・・・と結構真剣に考えています。

培養コストはきちんと継代できれば10Lで数十円単位。それなら現地でも可能と言えば可能だし、細菌さえ発育する環境なら十分できると思うんですよね。

最近痛切に思うこととして、産業動物や途上国など、最先端の医療を当然のようにできない地域では、いかに、病気そのものにならないか。に尽きると思ってます。それをいかに効率よく、簡単に安価にできるかはひとつのキモだと(まぁそれが全てではないでしょうけど)

自治体でもこれを採用している所もあるみたいなので、一度真剣にきいてみようかなと。

ところで、内容は濃かったんですが、この寒い中5時間も外で特に動くこともなく延々立ち聞き・・・・軽く死ねます笑