In Blue Skies

とある獣医の青年海外協力隊日記からのイギリス大学院留学

大人の社会科見学。

おかんの実家の近所の酒屋さんのご厚意で、愛飲している日本酒「龍王桜」ならびに「八兵衛」を醸っていらっしゃる「元坂酒造」さんの蔵元を見学させてもらえることになり、行ってきました。

場所は、伊勢にほど近い三重県多気というところにあり、実家から高速を使って一時間弱。

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周りには茶畑や家が点在し、すぐ側にきれいな川が流れているような、酒造りには最適な感じの場所に立地していました。

若だんなさんに迎え入れられ早速造り場の見学へ。日本酒は冬場が作りの最盛期。ということで、現在は大量酒と一般的に言われているいわゆる「本醸造」の造りが一段落して、「純米酒」の造りが始まっているところでした。

ちなみに簡単に言うと「本醸造」は、造りの中で最終的に醸造アルコールを添加したものを指します(厳密には違うかもしれませんが。)いわゆるコンビニに売っているようなワンカップとかはまずこれです。ただ、本醸造の全てがまずいもののわけではなく、醸造アルコールを添加してあげることで味に締まりが出て美味しくなる場合もあり、杜氏さんによってはあえて添加する場合も多いです。

僕の好きな酒では灘の「大黒正宗」という酒も本醸造ですがかなり美味いです。

「純米酒」は文字通り、米、米麹しか使っていない酒のことです。

案内されながらいよいよ日本酒の酒樽へ。

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造りのまっただ中のため、今日は残念ながら蒸し米造り、麹造り、酒母造りなど繊細な行程は見学できませんでした。酒造りの行程の中で見学させてもらえたのは、最後の醪造りの段階だけでしたが、タンクの上の方まで、登らせてもらえました^^IMG_1187 IMG_1197

タンクの中では、発酵が進み、ぽこぽこと音を立てながら醪がこの瞬間も出来上がってきています。

若旦那さんいわく日本酒の「赤ちゃん」です。僕は車だったので舐める程度でしたが、同行者はしっかり試飲させてもらっていました。それから絞り立てさえも・・・・・

羨ましい・・・・。

この行程をもう数日続けた後に、上槽、いわゆる濾過されて、日本酒としてこの世に生まれでてきます。

30分くらいの案内の後は、若旦那さんからお話を色々聞きました。

若旦那さん自身も今回で三回目の造りへの参加ということだったらしいのですが、心底お酒好きなんだろうなぁということが伝わってきました。

そしてこれからの日本酒市場の状況を憂いていらっしゃいました。

「今は地酒ブームと言われてますけど、それは愛飲家の人が喜んで騒いでくれているだけで、実際の規模はどんどん縮小していっています。今の50代、60代のよく飲まれる方達がいなくなるころ。そのころに愛される酒をいかに造っていくかが今試されているんだと思います。」

「八兵衛のコンセプトは、ご飯と一緒に飲める酒。飲み飽きない酒、邪魔しない酒を目指して造っています。ただ、やはり僕の周りを含め、そうやって腰をどっしり据えてお酒を飲む。という人が少ないなぁ。というのは感じますね。」

と若旦那さんはおっしゃってました。

実際に今の日本で日本酒を飲む人は飲んべえの中でも15%くらいらしいです。ということは単純に言って酒好きが7人集まってその中で日本酒飲むのが1人しかいない。そんな現状です。

居酒屋に行ってビールですら書かれている銘柄が、日本酒では何も書かれていない現状を見ると愕然とします。僕自身も当初はそうでしたが、そんな銘柄もわからないような酒を飲んで、日本酒を飲むと後味悪いし頭が痛くなるから嫌い。という認識が若い人の中で広まっていってるのではないでしょうか。

酒の好みはそれぞれです。ただ、杜氏さん達がものすごい手間ひまを込めて造った素晴らしい日本酒が、そんな認識の下で日の目を見れない・・・それだけは無くなっていって欲しいと願うばかりです。

これから純米の造りが一段落した正月あけの真冬の頃から「吟醸」、「大吟醸」の造りが始まるとのこと。

「ピリピリした日が続きますよ、飯の時も母親と会話も無いくらい笑」

来年の春には、今、タンクの中で醸されている日本酒の赤ちゃん達がしっかり育って店頭に並びます。

またさらに日本酒が好きになった。そんな酒造見学でした。